子育て ≒ 親（自分）育て かもね
（身延山 祖師堂）
地元 潤雨山 正徳寺の開基 身延山第十二世 円教院日意上人の
五百遠忌法要に行って参りました。
次回は50年後・・・さすがに 生きていません(^-^;
http://blog.livedoor.jp/kaito308/archives/66060543.html
若い頃から身内が息をひきとる瞬間に
立ち会ってきた自分としては
いかなる困難辛苦にも耐え得るように
生かされてきたように思う
他人のことで心を痛めるのなら いざしらず
自身のことで狼狽するのはみっともないぞと
先祖から明確なメッセージが届き
更には 仲間と強い絆で繋がっている限り
これら諸々の環境設定を信じて
進んでゆくしかない
祇園精舎の鐘の声防災無線の人の声
諸行無常の響きあり山崩壊の知らせあり
沙羅双樹の花の色沙羅に刃向ける童あり
盛者必衰の理をあらわす少子高齢の理をあらわす
おごれる人も久しからず出でし人らの沙汰もなく
ただ春の世の夢のごとしただ山河のみ残るがごとし
たけき者も遂には滅びぬ猛きも弱きも寄り添へば
偏に風の前の塵に同じ偏に昔に回帰するに同じ
このトレーラーハウスは平成元年4月生まれの長女の5歳の誕生日に納入されたものなので、
かれこれ16年7ヶ月経ったことになる。
当時は地球元気村関係者や釣り仲間が多く訪れたことから、来客の宿泊用にしたいと思った。
仲間と気兼ねなく酒を飲める場所が欲しかったこともある。更には小学校に入学したての長男の
勉強部屋としても使えると考えた。
我家には子供用学習机というものがない。女房の実家や親戚からの祝い金で本来はそういうものを
揃えるべきなのだろうが、そうせずに このトレーラーハウスの購入資金の一部に充当させてもらった。
田舎なので普通のプレハブ式の離れを建てたほうが目立たなくていいかもしれないとも考えた。
最終的に購入を決定づけたのは、家族で展示場に見学に行った際に、まだ4歳だった長女から
「一番ちっちゃいので いいから買って」 と囁かれたからだった。
当初は物珍しさも手伝って、TBSが取材にきて朝の番組で放映されたこともあった。
著名な釣り人や有名人が泊まった。地域の若い衆も集まった。
長男長女は最初の3年間だけクリスマス会に使っただけで、実際に勉強部屋として利用したのは
二人とも高校受験直前の2ヵ月間だけであった。
子供たちが高校進学と同時に家を出ていく頃から、少しずつ雨漏りするようになった。
北米仕様で多雨多湿な日本の気候には適さないのか、屋根に登ってコーキングを
施しても劣化は年を追うごとひどくなり、とうとうブルーシートで被うようになった。
その後も釣り仲間が時々泊まりにきた。釣行前夜の酒盛はなんともいえない至福のひとときだった。
ブルーシートだけでは雨漏りを防ぎきれず屋根材そのものも弱くなり、とうとう屋根に登れなくなった。
ついには室内の作り付けの家具まで傷んできた。最近ではUV仕様の厚手のシートを二重にして
被うようになった。ホームセンターに寄る度に2間×3間サイズのシートの在庫確認をしている。
お袋がいなくなった今、ゲストには気兼ねなく母屋に泊まっていただきたいと思っている。
満身創痍のトレーラーハウス。居間では次男が兄姉たちと同様に座卓で宿題をしている。
彼の高校受験までは到底持つまいが、1年でも2年でも延命してほしいと願っている。
宗匠様から上記記事添付のメールが送られてきた。〜記事中「今日、目に余る社会的な問題が噴出しているときに、鋭敏な感覚の大学生が社会に問題提起をしないのはいかがなものだろうか」に痛く同感した。ついては、６年離れた親爺ら世代はどのように捉えられるか『正論』を期待する〜という内容である。
（ちなみに、宗匠様は昭和２４〜２５年生れのいわゆる団塊世代の最終学年。親爺は昭和３０年生まれ）
『正論』を期待されても困るが（笑）、参考意見程度でよろしければお応えしたい。書き出しから長くなりそうな予感がしているし、短くすればしたで舌足らずになるに違いない。今後頻繁に加筆修正のあることを初めにお断りさせていただきたい。
このような拙いブログを３年２ヶ月続けてきたのは何のためか？と聞かれれば、自分が感動するため、家族を記録するため、地域のための順だと答えざるをえない。長女は時々覗いているようだが、長男は興味がなくて見ないのか、意識的に見ようとしないのか、実のところは分からない。俺が死ねば読んでくれるだろう〜ぐらいに思うことにしている（笑）
かように、世代間のコミュニケーションは難しい。ましてや現在の大学進学率からいって、彼らは決して社会的にエリートではない。加えてこれだけの就職氷河期を迎えることになると、一握り以外は本人たちにもそのような自覚はなかろう。挙句には「消極的な若者を育てたのはあなた達先輩ではないか」などと言われる始末。何でもオヤジらの責任にされるのは心外であるが、確かに舌足らず、思慮不足だったことは否めない。
〜と書いたところでタイムオーバー。以下、時代別に要点のみ箇条書きさせていただく。独断や偏見は大いにあろう。だから みんなで考えてほしい。というのも、こういった分野は人文科学者たちの領分であろうが、彼らは複雑多岐にわたって分析はするものの、昔の寺子屋のように単純明快に伝達する実践性が乏しすぎると田舎親爺はいつも思っているからだ。「我々は全ての領域において専門メニューを用意してある、どのように咀嚼するのかは君たち学生にかかっている」〜と、少しも食感や味わいのようなものを説明しようとしてこなかったというわけだ。
≪戦後３０年間≫
貧困からの脱却
安保闘争を経験した世代 闘争心と自尊心が涵養 醸成
人権擁護 不平等の打破 正義感 責任感
それに伴う 感動 充足感 達成感
ゲバ棒・ヘルメットのかわりに官僚、企業戦士の道を選んだ一部エリートたち
全ての事務屋と技術屋がよく頑張った時代
社会主義 共産主義 ≠ 均等分配条件付資本主義
経済成長力に裏打ちされた富の再配分の実践 中国との国交正常化
≪高度成長〜バブル崩壊≫
中上流志向へ
社会が成熟し学生運動が治まった平穏な世代
金銭・物質至上主義 子供も大人もほしい物を手に入れる時代
闘争心も哲学も不要
システムの有効性、妥当性、協調性が尊ばれた時代
高福祉低負担
余裕たっぷりのアジア外交
低開発国を発展途上国と言い換える
隷属からパートナーへ アメリカとの「いい関係」が保てた時代
≪現在≫
中流意識からの脱落 下流志向
社会が混迷期を迎えた中で育っていく世代
ぬるま湯に浸かっていたらいきなり冷水をかけられ慌てふためく時代
低福祉高負担
社会の矛盾云々より内山のいう世界中の『収奪システム』が機能しなくなってきた
中国などの経済成長が はっきりと脅威になった
アメリカがこけたら皆こけた
以上の色分けは概ね３０年間隔で捉えてもらってよい。誰も悪くないということが分かる。むしろ尊敬したいぐらいだ。紺色があと２０数年間も続くのは困るが、続くかもしれない。もし続くとすれば人は精神的な豊かさを追求していくしかない。茶色と緑色の両方の時代を過ごしてきた世代が前半に「緊張」を、後半に「弛緩」してきたことを省みれば、現在の若者にメリハリがなくなったなどと嘆いてみたところで、全然説得力がない。
爺ちゃんや親父らはモノがなかったり少なかった時代に育った。
「にわか成金」のように途中から「いい気」になりすぎた。
満たされて育ったお前らの将来には得体の知れないものが待ち構えているかもしれない。
いろいろなものに限界がきて瓦解しているだけに、もしかするとビッグチャンスが巡ってくるかもしれない。
それまでに人間（性）が壊れてしまっては何にもならない。
黙して語らず、当事者にならないままで人生を終えるのも自由だ。
だけど、それじゃつまらなくないか？
どうだろう、毎日意識的に感動してみたら。
そうすれば、断固抗議すべき局面に必ずや遭遇するはずだ。
重要なのは事の大小ではなく自分との係わり度合いではなかろうか。
なあに、大多数のジジイ共は未だにそんなことにすら気づかずにいる。
これをオヤジたちは「理想」と名づけることに、たった今決めたところだ。
（安竹信男〜望月正人 と合わせてご覧ください）
井川のこと
「おとうさーん ごはんだよー お肉焼こうよー」
〜井川湖でルアーを振っている私〜背後の一段高くなっているキャンプサイトから長男が呼んでいる〜目の前の湖面は夕陽に映えて金色に輝き〜振り返ると〜妻と幼子たちがこちらを向いて手を振っている〜
井川湖畔にあった「もくもく王国キャンプ場」でのひとコマである。長男が3歳半で長女はまだ1歳半だった。17年経った今も、あの何ともいえぬ至福のひとときを忘れることができない。
今日は抜け駆けの釣りなどではない。地球元気村のような受け入れ側の立場でもない。自分の家族と一緒なのだ。母親は兄貴達が泊まってくれているので家で一人ぼっちにさせていない。何かあっても、あの峠をひとつ越せばうちに帰れる。なのに今いるところは日常の場所ではない。それほど心安らぐ要素が何もかも揃った旅であった。
食事を済ませると、井川の若い衆が次々と集まってきてくれた。3年前のＭＴＢ大会で顔なじみの人もいる。花火をたくさん打ち上げてくれた。子供達を寝かせたあとは本格的な酒盛りがはじまった。メンパ職人の跡取り、神社の宮司の跡取り、東海パルプの社員、鹿牧場主など、正人さんが一人一人を丁寧に紹介してくれた。
いろいろな話で盛り上がった。「そっちは朝刊や牛乳は何時頃配達される？」〜「朝6：30頃だよ」〜「いいなぁ、井川は昼頃でないと来ない」〜「やっぱり静岡市中心部から来るの？」〜「大日峠越えなので車で片道2時間半、往復では5時間かかってしまうから」〜「うちのほうは甲府まで1時間半で、隣町の国道沿いに中継店があるから」〜「石和温泉までどのくらいかかる？」〜「甲府とほぼ同じくらい」〜「俺達は6時間くらいかかる」〜「だったら林道開いてる期間はうちのほうからいけば4時間弱じゃん」〜「!!!そうかぁ、今度からそうしよう」、「昔、大西屋旅館からそっちに嫁入りしたの知ってる？」〜「ああ、そのお婆さんなら俺んちの前のうちだよ」「てことは60年以上もお互い交流がなかったってことだね」〜「そういうことだよな」〜「ところでイワナ釣りにいきたい」〜「源流にいくのなら、ゲートの鍵をいつでも貸してやろう」、「いやいや誰も行かない近場の秘密沢を今度案内してやろう」等々、まるで昔からの地元仲間同士のような歓待を受けた。
このキャンプ場は静岡市から年間500万円の助成金がおり、井川の若い衆が当番制で運営している。サイト使用料収入も自由に使えるので、ボランティアではなく仲間たちに日当を払える。モーターボート1艇、カヌー15艇、サイクリング自転車20台とレンタル備品も年々増えてきている。カヌーでなければ行けない湖畔の温泉を仲間で掘り当てた。「もみじマラソン」も年々盛況になりつつある。この「もくもく王国」ももっと有名にしたい。ついては地球元気村の風間深志村長を来月のイベントに連れてきてくれないかと正人さんに頼まれた。
さっそく風間さんに連絡したら、OKとなった。確か9月の第一土曜日だったと記憶している。ところが、あいにく台風が直撃し東名高速で行った風間さんたちはかろうじて井川入りできたのだが、こちらは林道はもちろんのこと、国道、県道全てが閉鎖となってしまった。井川に着いた風間さんから電話が入った。 「来るんでしょ？」〜「道路が全部閉鎖になったのに行けるわけないでしょ」〜「でも、待ってるよ」〜「・・・」 しょうがねえなぁ。。ま、言いだしっぺだし行けるところまで行ってみるかと出かけようとしたら、たまたま帰省していた兄が「バカヤロ、俺も一緒に行ってやる」というのでスコップや雨具をレガシィに積み込んで一緒に出発した。道路の随所に立っている交通規制員に緊急であることと自己責任を負う旨を伝え、県道〜国道〜県道〜山道伝いに井川を目指した。バリケードを外したり、元に戻したり、倒木や岩石をどかしたりを繰り返しているうちに、お馬鹿兄弟は段々と楽しくなってしまった。とうとう８時間がかりで夕刻たどり着いた。「わっ、ホントに来た、よく来れたね、さすが○○さん！」と喜ぶ冒険家に「ええ、崖崩れはちっとも怖くなかったけど、道々で急病人が出たとか嘘つくほうが大変でしたよ」とこたえた。井川湖もバックウォーターも濁流で真っ茶色になっていたため、風間さんを誘き出した「大井川源流・ヤマトイワナの釣り」の約束は果たせなかった。
台風一過の翌日は雲ひとつ無い好天となった。夜明け前にテントを抜け出した愚兄は良形アマゴを吊るして帰ってきた。事実上中止扱いとなってしまったイベントにも拘らず、フットワークのよいバイクでの参加者たちが５、６０人ほど集まってきた。みんな予期せぬ「教組」の参加に驚き、Ｔシャツやらヘルメットにサインしてもらい大喜びしてくれた。風間さんの講演にライダー達は真剣に聴き入っていた。少人数ながら盛り上がった集いであった。釣りが出来ず欲求不満の残る風間さん一行と私達兄弟は、帰路、安倍川上流の梅が島温泉に寄り道し、暗くなるまでアマゴ釣りをした。水量が半端ではなかったので渡渉中、白石勝彦さんからいただいた大切な渓流竿を不覚にもこのとき流してしまった。
みんな若かったし、何をやるのも楽しかった。清水市との合併により政令指定都市となった静岡市葵区井川は現在、もくもく王国は閉鎖され、四ッ星評価だったオートキャンプ場も管理人が定まらず、振るわなくなってしまっていると聞く。人手の少ない山村ではそれも仕方のないこととはいえ、気持ちを一にすることだけはいつまでも大切にしていきたい。
幸いなことに、私には 「おとうさーん ごはんだよー お肉焼こうよー」 という子が、まだいる。
（社会）を（学）ぶということ
これまで子育てや郷土のことを単発的にブログに書いてきた。同時に、宗匠様から効率的な俳句指導を仰ぐ手段として、鎌倉殿の読書観の中からエッセンスをお裾分けいただく場として、南部守殿とのコミュニケーションのツールとして、それぞれ機能を果たしてきた。
個人的な日記や記録の類であるので肩肘はることなく楽しみながら淡々とすすめてきたわけであるが、最近になって少しづつそれらの「点」が「線」で結ばれつつあることに気づいた。
これは、どういうことなのか？と自問してみた。書くことによって、これまで曖昧模糊としていた事象がはっきり見えてきたからに他ならない。更に云うと、日記帳などの紙媒体であれば個人的に読み返すことぐらいしかできないが、情報の伝達・共有・対比が可能な電子媒体ならではのメリットだといえよう。
「つれづれなるもの」が労せずして記録となり、いつしか信念・信条として整理・整頓できてしまうとは・・・今頃になってＩＴ環境の恩恵に感謝しているところだ。
と同時に、拙い過去の綴りをあらためて読み返してみると、社会を学ぶということの重要性をいい歳になってやっと認識できた。社会・人文・自然―科学という領域にとらわれない生身の人間の関わり、生活そのものがすなわち「社会学」なのだといえるのかもしれない。
この程度の乏しき情報量だからこそ、読み返しや記憶の定着をはかることが可能なのだろうが、日頃膨大な量の情報を扱っている地元ＮＰＯ職員の髭大尽殿や彩姫様の場合はそうもいかないであろう。
「なんでうちの町に来たの？」 ある時、お二人別々に訊ねたことがある。
「自分には、これ（上流域研究）しかないんです」
「こういう上流域でしか暮らせなくなる世の中が近い将来必ず来ると思うから」
という返事がそれぞれかえってきた。
髭大尽殿のときは、地元の陶芸家と私とで「あなたほどの優秀な人は、こんなとこ早めに見切りをつけたほうがいいよ」などと酔いながら少々意地悪いもの云いをしたものだから、こんな風な応答をさせてしまったことを今反省している。ちょうど当時、ダムの堆積土砂すら解決できずにいた我々二人は少々自虐的になっていたのかもしれない。
かたや、彩姫様のほうは学術的な意味合いというより、女性特有のというか動物的な防衛本能のようなものが感じられて、しらふで聞いていたこちらのほうがむしろ恐ろしくなった（笑）どうりで10種の穀物づくりをしている集落に興味をもたれるはずである。
お二人のようにそれ相応の学問を修めてこなかった親爺ではあるが、我が愚ブログを通じて、ひとつだけ判明したことがある。それは、我々は国民でもなければ県民、町民でもなく里人、村人に徹しなければいけないということ、そして今後は同一同種環境の者同士で物事を考え決定していかなければならないということに尽きる〜ということである。
そもそも日本の国家そのものの成り立ちが欧米のようなシステムや宗教によるものではなく、同種の生活環境や自然環境を共有する集落単位がベースになっていたはずだからだ。燃料も食料も自給できていたので、中央や外界に何一つ頼ることなくただ従ったふりをしていさえすればよかった。中央とても、さしたるリーダーシップを発揮せぬまま勤勉な国民性に委ねるだけで、いつしかなんとなく一極集中の国家となったに違いない。〜〜〜こんなことを云うと政治経済なり近代史の専門家から一笑にふされてしまうかもしれない。
では、問おう。
現国家は、社会システムは、人々の意識は、何ゆえにこのようにファジーなのか？と。どなたも「リーダー不在」としか答えられないではないか！
では、解こう。
1950年代後半、「三種の神器」登場とともに産業振興の基盤づくりが全国各地で始まった。水力電源開発ラッシュもその一つである。開発する側も元はといえば各地方から寄せ集められた田舎者であった。従来の集落共同体の代わりに企業や役所などの勤務先を新たな共同体と認識し、与えられた業務や任務だけを遂行すればよしとしたはずだ。感覚的には集落共同で野良仕事をするのと何ら違わなかったはずだ。優越感をもって郷里を離れて代を重ねていくうちに、もはや集落共同体の同種意識は完全に消え失せ、その子孫たちは裾野を拡げて都会人となっていった。
田舎側も道路が整備され車という移動手段を得て、食料は栽培、採取するものから買うものになる。薪割りをやめ、ボイラーや灯油を買うために現金収入がどうしても必要になってくる。養蚕が盛んな頃のような臨時給与的な依存ではなく、毎月安定した現金収入が必要な生活スタイルとなる。林業は斜陽の一途をたどる。唯一の現金収入は公共事業の配分に頼るしかない。それを見越したいわゆる農林水産・建設族と呼ばれる政治家らが「任せておけ」と胸をたたく。田舎の有権者達は投票率と得票率の高さをもってそれに応える。
やがて村人の子孫にあたる都会人たちは、そういった「無駄使い」に気づきはじめた。インサイダー行為ができぬようアメリカの猿真似をしてルールだのコンプライアンスだのをお題目のように一斉に口走るようになった。村八分しようにも、共同体のエリアをあまりにも拡大させすぎたために悪代官など払拭できるはずがないものを。
「将来どこに住もうが此処が本拠だということを忘れるな！」と親父や爺さんから言い聞かされて育ってこなかった「似非江戸っ子」たちは口を開けば、「コンプライアンス、コンプライアンス」と。こちらの側から云わせてもらえば、自立的な相互扶助のメカニズムを勝手に壊してきた連中にとやかく言われる筋合いはない〜である。
宮台真司首都大教授によると、経済学は資源配分の合理性に、法学は紛争解決の合理性に、政治学は集合的決定の合理性に、教育学は人為的社会化の合理性に、宗教学は根源的未規定性の処理の合理性に、それぞれ注目する学問だそうだ。社会学とは、社会秩序を検証する上で「世の中のさもありそなもの」を注視し克服するための学問だと述べている。
小泉以降、利益誘導型の政治が通用しなくなった以上、田舎者の今後の心の拠りどころとなるのは哲学や思想であり、理論武装手段としての根拠をこの社会学に見いだすべきであると思う。それは、地域それぞれの事情に合った「農村社会学」「山村社会学」「漁村社会学」であっていいと思う。
例えば中国産の冷凍食品が危険だと国中が右往左往しながら商品撤収している様を、例えばガソリン価格と財政事情を両天秤のごとくアピールしている様子を、社会学的な視座から捉えてみればよい。共同体や自立扶助から抜け出し自然消滅させた結果がとても分かりやすいかたちで見えてくる。
なにが「合理性に注目すべき」学問だ〜とストッパー装置のない政治、経済主導の社会科学の「無為無策ぶり」に不信感をもってしまう。今さら伐採、薪割り、炭焼、百姓に戻れない地域共同体であろうとも、いつまでもこんなものに100％寄りかかっていたのでは大変なことになってしまう。
親爺は今、自分達の生い立ちなり僅か4、50年前の歴史を振り返る必要性にかられている。失ったものを取り返すのは容易なことではないし、今となっては不可能となったものも数多い。残すべき「モノ」と守るべき「精神」を見極める作業に、早急かつ冷静かつテクニカルに着手しなければならない。
（あまり重くなってもいかんなぁ〜と思いつつ あえて、関係者に全員集合していただきました）
うちに帰ろう
日が暮れぬうちに うちに帰ろう
夕餉や入浴を私と共にしようと待つ子のもとに
速やかに うちに帰ろう
うちに帰ろう
わずかばかりのイルミネーションが点滅しているうちに帰ろう
くだらぬ付き合いや非効率な仕事はさっさときりあげて
とりあえず うちに帰ろう
うちに帰ろう
まだ宿題を終えていないであろうあの子のために帰ろう
繰り上がりの足し算も繰り下がりの引き算も教えよう
とにかく うちに帰ろう
うちに帰ろう
付き合いが悪くなった、野心がなくなった
何と言われようが「大きなお世話」と開き直って
勝手に うちに帰ろう
うちに帰ろう
そろそろクリスティアーノ・ロナウドのユニフォームが届く頃
それを着て、私の「かっこいいぞ」をきっと待っているはずだ
いそいそと うちに帰ろう
速やかに
とりあえず
とにかく
勝手に
いそいそと
うちに帰ろう
うちに着いた
八日市場の叔父
「辛いかもしれんが実の息子のお前にゃ本当のことを言っとくぞ
あにぃさまは事故直後、自分のほうが重体なのに、
気絶しているあんねぇさまを最後まで気遣っていたそうだ
駆けつけた救急隊員や安協関係者はみんなその様子を目撃している」
〜〜〜
「○○○は大丈夫ぞ 護摩を焚いてもらったら助かる卦がでたからな
大聖寺お不動様の大和尚さんが言ってるから間違いない」
〜
本当のところは、護摩の焚き具合は悪く、大和尚さんは
『この甥子さんは助からんね』と言っていたらしい
兄貴が早く逝ったのも、護摩がうまく燃えなかったのもすべて運命なのだ
〜〜〜
亡兄と深夜帰省中、ガス欠になって叔父のところにころがりこんだ
「将来ある者が そんなこんで どーするだ！」と一喝しながらも
近所のガソリンスタンドを起こして頼み込んでくれたこともあった
〜〜〜
ぶっきらぼうで、口の悪い叔父だったが
会社を辞めて田舎に引っ込む相談にいくと
終始笑顔で迎えてくれた
「田舎でも みだましくやれば それなりのこたーある
なんかあったら いつでも おらん家ぇー来い」
〜〜〜
そんな義叔父が亡くなって かれこれ２０年になる
思い出させてくれたのは和尚様ブログである
この世には辛き嘘あり真あり
亡き叔父に合掌
問題意識と当事者意識
俗に言う三流大学の法学部を卒業した。人に学部を問われれば、「 法は「ほう」でも阿呆学部のほうだよ」と自嘲気味によく答えたものだ。3年次から「税法」のゼミに所属した。教授があまりにも有名だったのと中学、高校、大学学部学科とずっと一緒のコースを歩んできた親友が入室試験を受けるので、という単純な理由からである。税務知識を持てば、とりあえず就職が有利になるだろうという浅はかな打算も少しはあった。
ところが、ゼミに入ってすぐにそれは間違いであることに気づいた。租税法律主義、納税者基本権の確立、応能負担の原則、企業優遇税制の是正、大型間接税（現消費税）導入の反対等々、今でこそ社会的に認知されつつある税観念であるが、税の徴収面ばかりではなく使途面も監視すべきだという当時としてはかなり国家にとって都合の悪い左よりの法解釈理論を学ぶ羽目になった。教授は共産党機関紙「赤旗」に寄稿したり、推薦してくれる就職先は「同盟」や｢私鉄総連｣といった労働組合団体のようなところばかりだった。一学年20名のうち半数が税理士と国税専門官を、若干名が公認会計士を目指す学生で、残りの半数が私のような｢なんとなく就職組｣という構成であった。
そんなわけで、真面目なゼミ生とはいえなかったが、｢常に問題意識を持て」の教えを２年間聞かされ続けた。貧しい家庭に育ち、立命館大学法学部の特待生として憲法を徹底的に学ばれ、大蔵省（現財務省）を入省わずか数年で退官し学者になった人だけに、世の中の不平等にはことのほか敏感な方だった。思想ではなく学問的なアプローチから独自の｢税法学｣ジャンルを確立され、税務に携わる人や財政学者のバイブルとなるような著書や論文を数多く残された。消費税導入を当時から予見されていて｢これは天下の悪税です！政府は導入後に順次税率を引き上げていくでしょう｣と繰り返し熱く語られていた。この３０年前の予言は見事的中している。在学当時はボーっとしながら聴講していたのだが、むしろ社会人になってから、恩師に対する評価が自分の中では高まっていったような気がしている。師との出会いがなかったら問題意識をもつこともなく、田舎に引っ込まなかったら当事者意識をもって「水をよみがえらせる運動」等に関わることはなかったかもしれない。
前置きが長くなってしまったが、今回世間を騒がしている社保庁の不手際や介護派遣サービス会社の不正受給を例に、自分なりの問題意識で語ってみたい。
社会保険庁と一口で言われているが、社会保険事務所は各都道府県にいくつかの出先をもち、職員は県庁の厚生部門と人事交流が盛んで、単なる国家公務員とは違う半地方公務員のような存在である。森首相の前後からIT化が推進され、小泉政権になって急速な電子化を余儀なくされた。もともと独自の電子文書管理がなされていたが、ウィンドウズ版普及の必要性にかられ、出先の職員はかなりフォーマットの統一を急がされたはずだ。私はその頃から零細事業所の総務全般を担当していたので、退職者の老齢年金の申請手続き等で社会保険事務所に足を運んでいたから分かるのだが、特に女性の名前で本来｢を｣であるのを｢お｣であったり、ひらがなであるものを漢字表記すると、年金受給に支障をきたす旨を窓口の担当者から口頭で聞いていた。昭和初期までに生まれた女性高齢者は自分の名前に無頓着なことが多く、戸籍謄本や住民票を見ながらでないと手続きできないなと痛感したものである。
では、どうしてこのような人為的なミスが多発してしまったのか。末端の職員の責任でも何でもない。もとをただせばすべて高級官吏の責任なのだ。各省庁の若手エリートらがアメリカのハーバード、エール、スタンフォード、MITに留学した。そこでマイクロソフトやインテルの世界戦略を目の当たりにする。即刻日本に持ち帰り、普及啓発するという単純な理由からなのだ。当時、NECはMS・DOSで、ある程度国内のIT環境を整えつつあった。それがいつの間にかワープロソフトの一太郎も表計算ソフトのロータスも国内市場から姿を消していった。今、ワードとエクセルでなければ仕事にならないのは、このような理由による。OSとしての使い勝手の良さや娯楽性や通信機能の充実度比較等もあっただろうが、グローバルスタンダードの名のもとだけでなされたこうした一連の行政関与には、国産OSの研究、育成、発展など、長い目でみた将来展望や意識は微塵も感じられない。
世界的潮流とはいえ、ウィンドウズ95→98→2000→Me→Ｘｐ→ビスタ〜と数年おきのＯＳ更新に翻弄され続けている我国の脆弱なＩＴ環境を嘆かざるをえない。あたかもビデオテープのＶＨＦvsベーターのシェア争いのごとき感覚でＩＴ整備がなされたことに問題はなかったのか、人材を育成、訓練する前にＩＴ化を急ぎすぎたのではないかと、恩恵に浴しつつも田舎ブロガーはそう考えてしまう。それを不祥事とミスだけに絞って怒っているのが、マスコミをはじめとする今の国民感情ではないだろうか。昨今の理工系離れを憂慮しつつも、こうなった以上は、当時の我が国のエスタブリッシュメント達の判断と実施のタイミングをリカバリーするような知恵のある若者の出現を望むほかはあるまい。
次に介護サービス｢コムスン｣についてである。日商岩井を若くして退社し｢ジュリアナ｣で成功をおさめた後に、人材派遣会社で急成長した男とのことである。機を見るに敏で、社会のニーズがどこにあるのかを把握することに人一倍長けているのであろう。人材派遣業などといえば聞こえはいいが、昔流にいえば山谷あたりで暗躍していた｢手配師｣のことである。不景気で長年の終身雇用制が崩れ、正社員を増やしたくない企業と身分保証はなくても仕事にありつきたい求職者の両方のニーズに応えたかたちで事業は拡大していった。本来はハローワークという公的な職業斡旋機関がありながら、かくも求人側があてにしなかったのにはどんな理由があったのだろうか。お役所仕事で迅速かつ的確でなかったからか、労基法や労衛法など適用していられないほどギスギスした社会構造になってしまったからか。いずれにしても、経済政策の失敗により生じた光（派遣業者）と影（派遣社員）であることは間違いない。
つい１５年ほど前までアメリカの押し付けにより休日確保や時短を奨励し、不景気になった途端に労働者の就業実態を座視するような労働行政に対して、腹が立つのを通りこして呆れかえってものが言えない。一方、彼のほうは経済が上向きになれば、人材派遣業にうまみがなくなってしまうことを、いち早く感じ取っていたのであろう。次なる介護サービス業は国内の人口動態、介護保険法のスタート等、どれをとっても安定度抜群である。彼の中ではこの介護サービスを正業に位置付けていたはずである。それなのに、このような存亡の危機の事態を迎えてしまった。別の系列子会社の認可云々いうより、この際不正受給額分を無報酬で一定期間介護サービスさせたうえで、閉幕（廃業）させるのが利用者にとって最も混乱の少ない収め方だと思うのだが、厚労省側にはそういった発想はないのだろうか。次々と他事業に取り掛かるような逞しい実業家であれば法的に認められるかどうかは別にして彼自身の口から名誉、信用回復のために「後始末をさせてくれ」と言うべきだ。この件も、年金記録同様、制度の開始を急ぎすぎたあまりの結果だといえよう。
身近な事例も語らなければいけない。
（介護保険）私の母の介護ベッドの月当たりのリース料が１年前までは1,500円程度であったのが、最近になって一気に8,500円になった。何の前ぶれもなく介護認定を厳しくしてきたのである。
（健康保険）数年前には内科外来の診察料、薬代合わせて１,５００円以内だったのに比べて、たとえ健保の被保険者本人であっても３，０００円以上は当たり前となってきた。最近の可処分所得の極端な目減りがアバウトな男の私にもはっきりと実感できる。まだ稼ぎのある我家でさえこんな状況なのであるから、田舎の高齢者が細々と貯めてきた蓄えは段々と底をつきはじめてきている。近所のお年寄は少しばかりの風邪なら病院にいくのを我慢しているとも言っている。
（労働・社会保険全般）自分の関係している零細企業側にしても、これ以上の法定福利費の高騰を受け入れるのはもはや限界にきている。
根本原因は全てお上にあると結論付けるつもりはないが、最近の国の舵取りをしている層の能力低下を危惧している。二大政党による田舎の切り捨て合戦を悠長に眺めている場合ではない。使いたい放題の社保庁の役人どもに一時的にいくら腹を立ててみたところで何も改善されない。
これまで田舎の誰もが自分はおおらかな日本人でありたいと願い、国家財政の一大事と我慢してきたが、そうばかりいっていられなくなりつつあるのだ。勝ち組負け組なんてものは都会の現象であって、低収入、低消費の田舎者には本来関係ないものであったはずだ。
恩師が３０年前に語っていた常に問題意識、当事者意識をもって事に処すべき時代が、とうとうやってきてしまったようだ。私にできることといったら、他出している孝行息子どもに呼びかけることか、愚ブログが目配りのきく政治家や高級官僚の目にとまるのを期待するしか、今のところ見当たらないのである。
�…構�がまだ小学生の頃に一緒に絵本をつくった。
大○は○み先生の絵本教室は週に一、二度行われたのだが 不まじめがたたって
皆よりペースが大分遅れてしまった。
そこで思いついたのが、このパソコン絵本。お絵かきも写真も自由自在。
ちょっとズルして、なんとか秋の文化祭に間に合わせた。
��｢えほんごほんの会｣の活動に本格的にかかわる。
｢奈良田の七不思議｣試作本がこれ。主要スタッフは以下のとおり。
絵：○ 一○ 方言指導：深○正○ 製本指導：大○は○み
��｢あなたのやる気応援事業｣の助成を受け｢売れる本をつくろう！｣と
表紙は和紙の厚紙に柿渋仕上げ、中紙もすべて和紙を使って100冊製作。
助成金の73,000円と売り上げはトントン。つまり、もうからなかったということ。。
�ち芦鵑稜箴絛發鮓擬蠅法■稗奪譽魁璽澄爾箸修梁昇猯舛鮃愼�。
奈良田民話を今度は音声収録して、ＣＤ付絵本で売り出そうという試み。
価格も��の500円から一挙に1,500円に。
今年2月8日の県民文化ホールでの｢奈良田物語｣上演時に飛ぶように？売れる。
劇団員のテキストになったことが ちょっと自慢♪
パソコンさえあれば、今後いくらでも増刷・録音できるので、最初にパソコンで
ズルしたことが思いがけないところで役立つことになりました。
一冊だけつくるのなら手作り絵本も味があって、なかなかいいものです。
「奈良王様は…」を「なろーさまぁー…」と言う関西弁のようなアクセントや
…は …が …に 等の助詞を省略したような独特な言い回しに注意しながら
聞いてみてください。 フランス語みたいに聞こえる人もいるかも。
奈良田弁はとても古く、言語学者たちから注目されている方言だそうです。 今では奈良田、西山地区の一部のお年寄りしかしゃべることができないようです。
○中のみなさん、このＣＤを聞いて 奈良田の方言 はやらせましょう！
（2004.10月 ○○中学校○鳳祭出展時コメント）「私のかかわった絵本たち」より
これまで４冊の絵本をつくったのだが、実は手元には１冊もない。
別に見たくも見せたくもない（お見せできる代物ではない?）ので構わないが、
いったいどこにいってしまったのだろう？と、時々思い出すことがある。 地元関係者をはじめ、市川大門の製紙会社の社長、柿渋を紹介してくれた建築士、
わざわざ文化ホールまで駆けつけてくれた宗匠様など、支えていただいた皆さんに
感謝している。
次男が生まれてこなければ、当時絵本教室など母親任せにして係わらなかっただろう。
長女の中学時代こんなことをやっていたところをみると、案外自分は教師向きだったのかもしれない。
採用試験の合否可能性云々を抜きにして、社会科の教職課程をとることなら可能だったが、当時の
自分は見向きもしなかった。教職が嫌いというのではなく、よその子に教えるという行為そのものが
高慢そうで、若かりし頃の自分にはとうてい理解できなかったからだ。
３人の子を育ててみて、小学校低学年時の先生の存在がいかに大きいのかに気づく。特に学習や
生活習慣は、この小３までの時期にほぼ決まり、中学や高校は惰性というかその延長線上で進んで
いくような気がしている。
先日、次男の初めての家庭訪問があった。ちょうど仕事で出かける前に時間があったので、夫婦揃って
担任の先生をお迎えすることができた。
母親：「なにも教えていませんので、先生にはご面倒をおかけしているかと・・・」
先生：「大丈夫ですよ、入学早々「僕は名前だけで苗字はかけません」とはっきり言える子ですから。
それより、お話しの能力がすごいですね。国名や虫の名前以外でも、びっくりするような単語が次から
次へと出てきます」
親爺：「よろしくお願いします」 〜と、ただただ何度も頭を下げるだけ。。
今更ながらではあるが、やはり学校の先生はまことに重要な職業である。
鎌倉殿、自然そのものである子供には手入れが必要であることは、やはり間違いない事実のようであります。
没原稿
若い頃から勤務先の所属している団体の広報誌の編集委員をやっていた。原稿が集まる見込みがない場合は、ゴーストライターになったり、編集委員自らが寄稿しなければならないこともしばしばあった。執筆依頼されている本人の原稿が締め切り間際ぎりぎりに間に合った場合は、当然我々委員のものは没となる。先日、机の中を整理していたら、そんな陽の目を見なかった15年前の原稿が出てきたので懐かしく読みかえしてみた。
最近、地元新聞社の他社記事盗用が問題になったが、実はこの原稿にも1.2箇所まずいところがある。無意識の内に倉本總氏のエッセイの言いまわしとそっくりになってしまったのだ。だから、没になったときには随分とホッとしたことをよく憶えている。
懺悔の意味も込めて、類似箇所を赤字で表記する。それ以外は、間に合わせの予備に急遽書いたものなのに、結構真面目にプチ内山節氏みたいなことを当時から云っているのが面白い。
15年前というと既にパソコンは普及してはいたが、今のようにデータを保管するということはあまりしていなかった。昨日、宗匠様からご一家の「旅のメモ」を送っていただいた。素晴らしくも羨ましくもある内容とともに、写真や紀行文が段々と電子化されていく過程が分かり楽しく拝見させていただいた。
記録量も旅の数も、まだまだ未熟な私ではあるが、次男を中心としながら増やしていきたい。
老齢者考
峡南十二町村の65歳以上の人口比率の平均は23.67％（うち最高が早川町の36.91％、最低が増穂町の19.54％）だそうであります。
全国レベルでみると、西暦2000年には、65歳以上の日本人が2100万人。そのうち寝たきりで介護を要する老齢者は、わずか100万人。残りの2000万人は、いわゆる元気老人であるといえます。
あの敗戦から高度経済成長へ、いわば日本を再建するために貢献を果たしてきた世代です。有能でパワーがあり、知恵や行動力は老いたからとはいえ、突然消滅するものではありません。
私ごとになりますが、郷里の○○町にＵターン以来15年間、渓流つり、養蜂、ハンティングなどの趣味が増えてまいりました。道楽とはいえ、そのどれもが年配の方々より教えを乞うたものばかりであります。山を歩けば、私などよりはるかに速いし、全ての物事に対する合理的な対処法は、行動範囲の違いこそあれ、企業のトップに比肩するのではないかと感ずることもしばしばありました。
会社組織に属したこともなければ、定年もなく、生涯「山の民」として現役を続けられる人々なのです。おそらく天寿を全うする直前まで普段どおり暮らされるに違いありません。峡南地方のような山間部には、このような元気老人やその予備軍といわれる人々が大勢いらっしゃいます。
ちまた、環境保全や自然回帰が唱えられてはおりますが、この素晴らしい「山の民」は一様に無口であるがゆえに、いつまでもスポットの当たらぬままになっているのが実情です。シルバーエイジ・パワーを単に高齢労働力としかとらえられない社会の認識にも問題があるといえます。
パワーを享受できるのが、一部の酔狂人や文化伝承にかかわる人たちだけでは困るのです。薬草の知識でも野営やサバイバル術でも何でもいいのです。自然と共存する諸々の知恵は、我々の周囲にあふれているのです。
時代に流されることなく営々と続けてきた人間らしい当たり前の生き方ですら、今日的なトレンドになりつつあるのです。いつまでも忌まわしい地理的環境を憂うことなかれです。
大人も子供も、もっともっと山や川で遊ぼうではありませんか。お年寄りを交えて地域の価値を再認識しようではありませんか。
素材はゴルフ場やスキー場などより、ずっと身近に、より豊富にあるはずですし、何よりも師匠ならいくらでもいらっしゃいますので。 〈了〉
５５歳で役場の収入役を辞め５８歳で亡くなるまでの３年間は、野良や山仕事を気ままにやりながら旅行代わりに我々のところを時々訪ねるのを楽しみにしていた。
地元に残る＝ろくな者ではない＝食べていけない＝きちんとした教育が施せない〜と親父が考えていたことは容易に想像できる。
年端のいかない子らを次々に甲府へ越境入学させながら、３人のうち誰か一人くらい定年後に家に戻ってきて欲しいという願いもあったようだ。
「こんなところに居てはダメだ」と言い聞かせながら育て、「定年になったら帰って来い」という考えを、親父は自分なりに合理的でバランスのとれたものだと信じていたのだろう。
実際には親父の描いていた１０年の空白や満期退職どころではなく、自分の死の直後、長男は30前で死に、三男は１年半足らずで退社し早々と家に戻り、都内に居を構えた次男だけが５５歳定年後、子会社に再就職している状況である。
当時の私の心の奥底には、身内の死への悲しみばかりではなく、親父のつくったこうした「ルール」と決別してやろうという妙なアンチ感情があったことは確かだ。
長きに渡り受け継がれ宿ってきた我々のＤＮＡが親父の思い描いたような長旅に耐えられるのだろうか？はたして安住の地など探し当てることができるのだろうか?結局俺はいつまで経っても「家」というものに縛られていて、大陸的なジプシー暮らしなどできない甘ちゃんなのだろうか？
これらは今もって「弱音」という言葉ひとつで全国的に済まされてきているように思う。
確かに所得は下がった。学卒後入った会社の同期は出世の個人差はあろうが、今の私の年収の2.3倍は貰っているだろう。当然、2.3倍の仕事をやらされているわけであるが。
40歳の頃、親交のある同期からこんな相談をもちかけられた。金融再編による合併に伴い7,500万円の退職奨励金を貰って辞めるべきか、残るべきかというものであった。それだけ貰えるのに何故躊躇しているのか私には理解できなかったが、聞けば子供の養育費と住宅ローンで全て消えてしまう額なのだそうだ。
バブル最盛期に都内に持家し、私立の中高一貫校〜大学に子供を通わせれば、1億円はもはや大金ではないということになる。いくら都会暮らしがコスト高とはいえ、男の甲斐性の証しとしてはあまりにも空しすぎる。
それに比べ我々の地域の若者達は、所得は少なくとも数年おきに新車に買い替え、住宅ローンの心配のない親伝来の家に住んでいる。
暇をもてあますあまりパチンコに大ガネを費やしてきたような少々の馬鹿者でも、田舎暮らしの作法が徐々に身についてくるから不思議だ。
養蜂や狩猟の趣味を持つ者は、仲間うちで話す時の目の輝きが違う、だいいち師弟関係の濃密度が違う。
最初はあんなに嫌がっていた村の郷役を活き活きとこなし、むしろそうしたコミュニケーションを楽しむようにさえなる。
大抵の親がかなりの子煩悩になり、そういう親に育てられた子供達の間にはイジメも不登校もない。
更にパソコンも使いこなせるとなると、都会暮らしとの差は、地価相場と子供への教育力といったところだろうか。
その教育とても都会になるにしたがって病む子の確率が高まるわけだから、何のメリットがあるのかと考えてしまう世の中になってきた。
そんな長年の漠然とした煩悶・疑問に標記の書を通じて鎌倉殿が応えてくれたのだ。
土着の思想というもののバックボーンが、探せばちゃんとあったではないか！
むしろ日本人全体のメンタリティーの根幹をなす思想と聞けば、早めに回帰した自分は正解だったことになる。
「知」と「汗」をもって「本質」を味わうことのできる人たちが「大移動」とまでいかなくとも、「小移動」する日はそれほど遠くないような、そんな気がしてきた。
（今後、加筆予定あり）
田舎暮らしとレジティマシー
ひょんなきっかけでコモンズという言葉に巡り合うことができた。共という概念については前にも触れたとおり、公でもなければ私でもない極めてあやふやなものである。あやふやなるがゆえに法律上も経済活動をおこなう上でもこれまで一切無視せざるを得ない代物であったようだ。したがって一文にもならないし、だいいち食ってはいけない。田舎においてどうしてそんなに必要なものなのか？学者諸氏はそれにレジティマシー（正当性）を見出そうとしているようだ。つまり限られた範囲内で自然発生した行動規範がコモンズであれば、それらを遵守しリーダーシップを発揮することがレジティマシーということになろうか？
確かに田舎暮らしを続けていると、日常この「共」の事象に出くわすことが実に多い。宗匠様の仰るとおり我が「ゆうげえし」などはその典型であろう。小グループが緩やかな拘束力のもとに互いに必要にかられて結ぶ極めて民主的な決め事である。更にやや拘束力が強まったものに郷役と呼ばれる役務（義務）や冠婚葬祭の手伝い（義理）などがある。奉仕作業、神仏事の当番、上水道水源の見廻り、保健衛生、テレビ受信管理にいたるまで細やかに規定されており、住民は一年中何がしかに係わらなければならない。人口の多い他所には自治会が組織されているが、ゴミ出しのルールの伝達等行政サイドの代理業務の意味合いが強い。行政サービスが行き届いているのでルール違反者は嫌われることはあっても村八分にあうことはない。それに比べて公（行政）だけでは全てカバーしきれない僻村においてはそうはいかない。今でこそ村八分は無くなったが、義務を果たさない者はいつしか相手にされなくなる。更に住みついて何代になるかによって発言力が微妙に違ったりする。年寄りなどは三代未満の家を「旅人（たびにん）」などと平気で云う風潮がいまだに残っている。私の地域ではそんな悪しき風潮すら失せ、他所からの移住者を拒むどころか温かく迎える傾向にある。それはそれで良いことには違いないが、エネルギッシュではないことは明らかである。
こうした閉鎖的なムラ社会の弊害を無くそうと、近代法治国家への道を歩んでいくなかで資本主義の根幹たる私有財産制の拡大と絶妙にマッチした占領政策による農地解放は、圧倒的多数を占める小作人にとってはまさに歓迎すべき戦後のルールであっただろう。地主側はというと、「これじゃデカイ顔はできん」とばかりにこれまで先祖代々発揮してきた無償のリーダーシップをさっさと返上し、子供達への教育に力を注ぎはじめた。元小作人の子弟達も「キャパが狭すぎる」ことを理由に跡取り以外は次々と郷里を後にしていった。こうして田舎の若者達は進学、就職のために地方都市へ都会へと流出していった。本来は生まれ在所の「共」の中心的役割を果たすはずであった若者達は都会に暮らし、親と年寄り達だけが郷里に残った。平均寿命が伸びたことにより平成１８年現在、両親共に健在とまでいかなくても、かろうじてどちらか（主に母親）が残っているというのが実態ではないだろうか。盆、暮れが近づくと他出している息子、娘家族を迎えるために老婆が沢山の布団を軒先に干す光景が見られる。高速渋滞や満員列車をものともしない「帰省」という名の大和民族の大移動がはじまる。今後実家に残した親が亡くなれば春秋の彼岸が大移動の時期となるのかもしれない。このような経緯で民主化は公私のバランスのとれた効率的な一極集中の国づくりには役立ったが、地方におけるコモンズ（共）の存在を急速に弱体化させてしまった。
コモンズやレジティマシーを考察するうえで面白い事例が私の地域にあるので紹介したい。うちの集落には共有林組合という特殊な財産管理形態がある。更にエリアを拡大すると旧・村有財産である財産区議会や天皇から国有林を賜った恩賜林管理組合というものがある。この二つが団体名義であるのに対し、共有林管理組合のほうは例えば田中何某他○○名と個人個人の権利の集合体である。６０数戸の集落住民が共有している財産の内訳は山林と土地である。これらを企業に貸しているので少なからぬ賃貸料が入る。もともと十数戸だけの共有だったが終戦後の昭和20年代から40年代にかけて徐々に新しい権利者を増やしていき現在の形態になった。村に永住し共有地の手入れや郷役に参加する者には新旧を問わず民主的に権利を与えていったのだ。持分比率で登記されている個々の権利であるので収入が発生した時点で戸別に分配するのが正しい処理なのだが困ったことが起きてしまった。60数戸の中には長い間に他出したり行方不明になった家が多数でてきてしまったのだ。連絡の取れる他出者なら問題はないが、行方不明者には連絡のとりようがない。上水道工事代金の受益者負担のような高額な公共的支出が法律上できなくなってしまったのだ。登記という法的根拠と永住条件という法的根拠のない村に従来からあった掟をめぐり村内では長いこと論争が続いた。つい先ごろ、心ある人が集い、個々の権利者に一旦所有権放棄をお願いして「共有財産管理組合」に寄付をしてもらい、本来の団体名義に登記変更をしようということに相成った。
以上、都会では確実に裁判沙汰になるであろう事例であるが、共の精神が根付いている我が集落住民の心意気＝レジティマシーを嬉しくも誇らしくも思った。先日、コモンズなんて田舎じゃ当たり前のことだと吹聴したのには、実はこのような根拠があったからである。ところで、本日51歳になってしまった。とはいえ、地元ではいつまで経っても若手の一人である（笑）
本を読むということ
鎌倉殿の読書量と宗匠様の幅広い教養には日頃から敬服しているところである。本を読むということは知的好奇心が旺盛でなければ、なかなかできることではない。発明王エジソンの資質を開花させた背景には、驚くほどの読書量があったといわれている。なんでも鉄道の車内販売員をしていた１２歳の頃、往きかえりの列車の８時間の待ち時間を全てデトロイトの図書館で過ごしたという。昼食をとるのも忘れて、なんと数年間で図書館の全蔵書を読破したというのだから驚きである。さらにエジソンの凄いところは単なるインプットにとどまらず、すぐさまアウトプットにとりかかったことだ。たった一人で新聞を発行し論説を手がけていった。やがて「１５歳の少年が発行する世界初の車内新聞」と当時の「ロンドン・タイムス」に紹介され大評判となった。
モラトリアムだとか自我形成だとか青少年期の精神状態は、とかくデリケートなものと捉えられがちであるが、人格を形成する時期の読書がいかに大切であるか思い知らされてしまう。今の日本に勤労少年エジソンが存在していたら、どうだったろう。街中に携帯電話、ゲーセン、ネットカフェ、カラオケが溢れていては図書館の蔵書には眼が向かなかったはずだ。何もない時代だったからこそ、電球や蓄音機の発明にたどり着けたわけだ。そう考えると、偉人、天才を生み出すのが随分と難しい世の中になったともいえる。知的好奇心が芽生える前に、かくも手軽に娯楽や人とのコミュニケーションが充たされてしまっては、携帯電話だけでピタリと文明が止まってしまうのではないかと心配してしまう。皆が同一同種の情報を共有するだけの味気ない発展性に乏しい世の中になってしまうのは困る。現に甲子園優勝の早実・斉藤投手がハンドタオルで汗を拭く姿がこんなに話題になっている。ミーハー側の気分なら分からなくもないが、他国のメディアだったらとり上げるだろうか。 ツールだけは使いこなせても、まともな会話や触れ合いのできない子ばかりになってしまうのはもっと困る。今のうちから各種商業主義に流されないよう各自が心構えしておかなければなるまい。
本格的なユビキタス社会の到来がすぐそこまできている。図書館の形態も従来の紙から電子書籍化されていくことだろう。媒体は何であれ読書する姿勢には変わりがないはずだ。問題なのは、エジソンより効率的な読書及び知的好奇心の充足が達成できる環境にありながら、「精密おもちゃ」の氾濫が邪魔をしていることだ。以前テレビで東大入試発表会場での合格者インタビューを見ていたら、将来の目標として学者だの官僚だのと多くが語る中、一人だけ「大好きな読書をしたい」と答えた者がいた。未知の世界を自らの手で選択、吸収していくことがいかに楽しいものであるのかを子供達に知らしめることこそが親爺世代の重要な課題であると考える。
子供には我々親までもが羨む生き方をする権利がある。期待とか束縛とは違う、もっと根源的なところでの純粋な親の願い、思いのようなものがある。命より大切なものはこの世に存在しないが、日々の出来事を楽しめる心が命と同価値であることに気づいて欲しい。それにはやはり読書が一番なのだ。ネット情報や耳学問には限界があるのだ。これまでマニュアル、取扱説明書の読み方だけしか教えてこなかった私を含む多くの親達に猛省を促したい。説得力の点からも、本も読まずに夜な夜なビールなんぞをビタビタと飲んでいる場合ではない（笑）。読書量乏しきブロガー親爺には、この程度のアウトプットしかできないが、これ偽ざる想いなのだ。
4年ほど前に、長野県の望月町から同町の広報誌への寄稿を依頼された。町名が望月なのに望月姓の住民が一人もいない、ついては 山梨、静岡、岐阜、愛知周辺の望月を名乗る人たちにシリーズで投稿してもらいたい〜という趣旨であった。望月姓の由来について何も手がかりがないので、憶測や想像のようなものでもよいのなら…という条件つきで引き受けた。
実は随分前に信州の人から望月町に望月姓が一人もいないのは戦国時代に皆殺しにされたからだと聞いていた。加害者は信玄なのか信長なのか分からないが、当時、武田が少なからず蹂躙した地だけに生半可な知識はこの際タブーである。もしかしたら自分達の先祖も被害者だったかもしれないし、そうでなかったら信長を加害者にしてしまえばよい（笑）ので、とりあえず真田へのリップサービスも忘れずに書くことを心がけた。
被害者、加害者云々は抜きにしてまで武田をフォローするとは、、、
やはり私を含む甲州人は皆、未だに信玄を父のように慕っているのかもしれない（笑）
昨年の４月に、望月町は佐久市と合併している。
長野のみなさんからご覧になって、南アルプス(赤石山脈)を隔てた山の反対側に私どもの住む早川町があります。昭和三十一年に六つの村が合併して誕生した町です。合併当初は一万人以上あった人口も現在では１，８００人と、極端な過疎化にみまわれている山深い谷あいの地域であります。
十月末現在で全人口１，８０５人中７０１人、全戸数８６５戸中３４６戸と４割の住民が望月姓を名乗っております。地区によっては７割近くが望月姓であったりもします。我が家の家紋は「丸に九曜」で、残念ながらマルのない由緒正しき「九曜」ではありませんので今回寄稿させていただくにあたり親類の所有する古文書を調べてみました。父方の曾祖母の実家には清和源氏からはじまり望月信雅を始祖とするお決まりの家系図がありますが紙質からみて、どうやら江戸中期に書かれたもののようですし、母方の祖母の実家には穴山梅雪の書状があるぐらいで、正確な望月のルーツに結びつく根拠を見つけることができませんでした。ただし、地域全体でいえることは特定の数字が神社名(六社神社、十二神社)に使われていることや代々「六」や「八」や「源」の一字を名前に使う望月家が今でも少数ながら存在していることです。こういった家は二十代以上代を重ねている家であり、たかだか十六代目の我が家の家紋にマルが付いていることにも納得がいきます。町の南端は静岡市井川や梅ヶ島温泉と隣接しており、これらの地域は望月、海野姓が多いところです。面白いことに早川町には海野姓を名乗る家は一軒もありませんが、もともとはこちらの山梨側から移り住んだものだそうです。また、近くに「稲又」という地域があり「伊那叉」つまり伊那との往還路のことで「望月のお姫さま」が伊那経由で籠に乗って落ち延びてきたという言い伝えが地元に残っておりますが、真偽のほどは定かではありません。だいいち信州側から南アルプスを山越えすることは、近代の登山技術や装備の無かった当時としては不可能であったと思われます。おそらく夏の一時期に高遠→北沢峠→南アルプスの尾根伝いに山梨、静岡へとそれぞれ分布していったとみるのが妥当ではないかと私は思っています。私どもの祖先が、信濃名族・望月氏の主従であったのか、はたまた当時武田氏の金山発掘の為に隷属させられた人々の末裔なのか、地元菩提寺の火災等により今となっては知る由もないのが実状であります。
信州への旅行の際には、真田の「六文銭」を見かけると胸踊りますし、「望月町」を通過するときは食い入るように街中を見廻している自分であります。信濃側から南アルプス越しに甲斐方面を眺めるたびに、なんの根拠もないまま、遠い先祖の労苦を勝手に偲んでおります。この度は良い機会を与えていただきましたので、いつかは貴町を訪ねて自分の推察や想いの整合を試みてみたいと考えております。（2002.10.27）
趣意書
古来、清き水流れし地なれど
故（ゆえ）これあり
水涸れて
山女 岩魚 鰍（かじか） 川虫のたぐひ
穏やかなりし棲家をうしなふ
時うつりて里人も然り
多くは郷里（くに）を離れ
残りし者、愚直なる者ども
平成の年、寄り合い 思案の末
清き流れ甦らせむ（？）こそ肝要なりと
衆議ここに一致す
平成3年7月27日 ○○町商工会青年部
今からちょうど15年前、地元の川に水を甦らせようと当時40歳以下の商工会青年部員が結集した。
昭和30年代に始まった水力電源開発により地元の川は長い間枯渇し、河原砂漠と化していた。
そんな状況を憂い、なんとかしようと立ち上がったわけだ。旅館の若旦那、大工、石屋、ガソリン屋、
陶芸家、酒屋など様々な職業の血気盛んな連中が集まり、手始めに何からやろうかということになった。
『いきなり過激なこんはしんで、どうずら？江戸時代の高札みとぉのもんで俺んとうの切実な想いを
伝えるっちゅうのは？』という私の意見がほぼ通り『ほんじゃあ、○っちゃん頼まぁ』てなことになってしまった。
さっそく地元の焼き物屋（陶芸家）と越乃寒梅か八海山か忘れたが、とにかくうまい酒をくみ交わしながら
上の文案を練った。
大部分が私の手によるものだが、どうも子供の頃にテレビで流行った『木枯紋次郎』のエンディング・
ナレーション調になってしまう。
『まあまあ悪くないし、これでいこう！ただし注文がある』陶芸家は私に『残りし者』だけだと自分のように
途中から移住してきた立場の者の参加感が乏しくなってしまう、だから『愚直なる者共』を是非とも付け加えて
ほしい〜と酔いながらも真顔で言うのだ。
かくして、大工がこしらえ地元の僧侶が筆書きし町内3箇所に設置された。
15年経った今、往時とは若干水量足らずではあるが取敢えず清流は甦り、その脇にはところどころ朽ち落ち
苔むした高札がひっそりと建っている。
独 白
あの頃の僕がどれくらい寂しい思いをしたのか、誰も知るまい
親元を離れ一週間、目の前を通り過ぎていく山交百貨店ターミナル発のエンジとクリームの
ツートンカラーの静岡鉄道バス それを見て涙する11歳の少年の心情など
あの頃の僕がどのくらい惨めで情けない思いをしたのか、誰も知るまい
同じ高校を受けて自分だけ合格したおない年の従兄弟が僕を気遣い、載っているはずのない
僕の名前を二度も見に行ってくれた15歳の頃のことなど
あの頃の僕の心臓の鼓動がどのくらい高鳴っていたのか、誰も知るまい
いくら親父の生死を問うても、「とにかく すぐに来てください」としか答えない収容先の病院へ
無我夢中に、それでいて意外なほど冷静に向かう23歳の新米社会人の姿など
あの頃ほど僕が本気で身代わりになればいいと 思ったことなど、誰も知るまい
ご先祖様、兄には生後８ヶ月の赤ん坊がいる、代りに身軽な僕を連れて行くがいい
午前２時、春一番の嵐の中で青白く光っていた我が家の墓石にお願いしたことなど
あの頃ほど僕自身の疲労による不覚を後悔したことなど、誰も知るまい
亡くなる前日の未明に睡魔という生理現象に勝てず、祖母の「役場に入れてください」の
うわ言に付き添いベッドから起きてやれなかった 己の精神の虚弱性に対する憤りなど
あの頃も今後も母親のことについては、誰にも知られたくないし、語りたくもない
我子に先立たれ針のむしろに毎日座らされているのが母にとっての地獄であれば、
母の愚痴と涙の連続が若き日の僕にとっての拷問 これでは恋愛、結婚などできやせぬが
僕自身の都合であれば、身も心も切り刻まれてしまった絶望が母にとってののっぴきならない事情
孫を抱かせるのが有効な妥協点と信ずるも、抱けないほど衰えてしまった体力そのものをまた憂う
既に信仰の救済範囲を超えているのであれば、そこには憐憫も惻隠も入り込む余地などない
もはや解決の糸口が見つからないのであれば、気晴らしに そろりそろりと野良仕事を任せるしかない
そんな成り行きなど、誰にも分かるまい
自分の死と僕がすぐに直面することになる課題をまるで予知するかのように
「お袋の生き様を見ていろ」とは 兄が死ぬ1ケ月前に僕にだけ言い遺していたこと
２９歳がはじめて２３歳に対等の口をきいた そんなことなど、誰も知るまい
全ての試練と運命が昭和54年に起因するものであれば、僕がこれまで山のように積み上げてきた怠惰の
蓄積と引き換えに、全て受け入れてもいいぞ！とは僕なりの覚悟 そんなことなど、誰も知るまい
過去の呪縛を過度に意識してはならない 自分の境遇に対する復讐心や帳尻あわせなんぞで、子供たち
や周囲と関係を持ってはならない
我は己が為に生まれて来たり、ならば己が自己実現とは何ぞや・・・
40近くになるも未だ解決できぬ未熟さを抱え込んでいることなど、誰も知るまい、分かるまい
学業水準を町の子供並みにしたいという親の教育方針によるものだったろうが、長兄は幼稚園から、
次兄は小学校3年時から親元を離れていった。末っ子であった私を出すのは両親もさすがに躊躇した
ようだが、それでも小6進級時に転校させられた。
今自分が子育てをする立場になって当時の親のとった行動を振りかえってみると、随分思い切った
ことをしたものだな、というのが率直な感想である。
私を出してからしばらくの間、母は畑で毎日のように泣いていたことを成人になってから知った。
今のように、どんな田舎に住もうが母親が自家用車で子供の塾や買物の送迎ができる時代ではなかった。
はたして期待どおり育ったかどうかは、とうの昔に亡くなった父に尋ねるわけにはいかないが
「お受験」や「英才教育」の田舎版のようなものだったのかもしれない。
長兄が中学3年、私が小学4年頃のことである。その兄がなけ無しの僅かな小遣いの中から実家に
残っている6歳下の私の為に参考書「グリップ」と問題集「アタック」を買ってきた。
「兄ちゃんが来週帰ってくるまでにアタックの何ページまでやっておけ！」おまけに自力で解かせる
ために解答集は事前に没収という念の入りようである。
学校の宿題がやっとで、教科書すら満足に読もうとしない遊び盛りの田舎の小学生が指示どおりに
やるはずがなかった。兄が最終バスで帰ってくる週末土曜日の夜が嫌で嫌でしょうがなかった。
長兄は一見穏やかな性格のように周囲から見られがちだったが、実は相当激しい気性の持ち主であった。
なにしろ次兄などは、数学でよく出題される食塩水の比重の問題をいくら教えても解らないことに
腹を立てた長兄に殴られ教科書が鼻血で染まったという事件が我が家では発生したばかりであった。
「殴られるかもしれない」金曜日の夜になると「アタック」のあのすべすべした白カバーを前に
憂鬱な気分になったことが未だに甦ってくる。昭和30、40年代は藁半紙がまだ全盛であった時代である。
大手教育出版社のものだけに特別に高質な紙が使われていたのだろうが、今でも光沢紙になじめない
のは当時のことが多少トラウマになっているのかもしれない。
この経験をもとに今どきの中学生像と比較してみると、だいぶギャップを感じてしまう。
はたして現在15歳そこそこの何人が弟や妹のための教材提供及び指導という、本来は親の
やるべき行為の代理や補完を成し得るだろうか？いささか早熟な兄弟愛ともいえなくはないが、
そんなことで片付けてしまってはならない精神性とか自我の確立のようなものが感じられてならない。
昨今の「個」や「プライバシー」尊重の風潮とは立場を異にするリーダーシップを当時の兄に見いだすことができる。
もしかしたら私の知らないところで実際は親が教材の購入代金を出していたのかもしれない。
仮にそうであったとしても、大人と対等なパートナーシップを持ちえていないと、なかなかできることではない。
やる気のなかった小学生の学力向上には役立たなかったが、今こうして当時を分析している40年後の自分がある。
その後、兄は医者を目指すも、団塊世代の厳しい受験環境のせいもあってか、結局は商社マンとなり、
29歳という若さでこの世を去っていった。三兄弟揃って上場企業に就職できたことをことのほか喜んだ父は、
その3ヶ月前に既に他界していた。
以来、跡取りとなった私の「決して悪くはない」山家暮らしは、周囲の人々に支えられながら今年で28年目に入った。
いくら時が経とうとも、このような理由から「グリップ」と「アタック」は私にとってかけがえのない格別な想い出なのである。
ダウンロードしてみたが、私の頃より後の年代のもののようだ。
白地に黒と紺の幾何学的な模様の入ったもっと冷たそうな味気の
無い装丁だったと記憶している。
せめて表紙が水森亜土の絵 だったらもう少し頑張れたかもしれない（笑）
今日から黄金週間ですね♪
うちでは離れて暮らしている上二人が帰ってきます
ネット環境から２日間離れることと
多少ネタ切れ傾向を理由に
今日明日は過去に綴った雑文を掲載させていただきます
５月になったらまた短歌に戻らなきゃ（汗）
いつまで続くものやら。。。
父の野良着
■ 別に大したことをするわけではないが、たまの休日に家のまわりを片付けようとする時に必ず想い出すことがある。26年前に亡くなった親父の野良着姿である。役場勤めの長かった父は古着となったYシャツやスーツの替えズボンをよく作業着として代用していた。いくらか山林を所有しているものだから、子供の私たちにとっても山の下刈りを終えないと夏休みやお盆気分を味わえない、そんな雰囲気の家庭であった。
■ 1台だけの刈払機を長兄が、父と次兄と私の3人は柄の長い下刈り鎌で下草を刈る。蜂の巣やマムシに注意しながらの急斜面での真夏の作業ほど辛いものはなく、家督権と分配保証のない次男、三男では1時間ともたない。「休み休み、やれ！」父はそう言いながら3人の倅どもの倍以上働く。昼食の時間になると化繊製のYシャツを汗でびっしょり濡らし上半身肌色となった親父が木陰に戻ってくる。ウール地の地味なズボンはお尻のポケットのデザインで子供ながらも古着だと分かった。大量の汗で透明になった白Yシャツの胸ポケットにしまった塩ビ製のシガレット・ケースからタバコを取り出してうまそうに吸う姿を見て育った。三兄弟そろって愛煙家になるはずである。
■ 親父が死んだ数年後、ある職人さん親子が我が家にやってきた。そこで懐かしい光景を見ることになった。息子は真新しい作業服を着ているのだが、親父さんのほうは間違いなく古着だ。年恰好どころかどことなく顔つきまで似ている。ピンと張った背筋といい顎を引いた姿勢といい、何から何までうちの親父とそっくりなのだ。私はやたらと嬉しくなった。とっさにこの人も太平洋戦争の体験者に違いない、そう直感した。
■ 今や大量生産、大量消費の時代。アパレル業界に限らず生産や流通がグローバル化され、古くなったモノをストックしようとする文化も意識も消え失せてしまった。ブランドや生産国にこだわりさえしなければ普段着などは10年、20年前に比べると格段と安く手に入るようになった。衣類なんぞの消耗品にお金をかけるより他にいっぱい買うものがあるといった風潮には、それはそれで同意できる。
■ そもそも昭和30年生まれの自分がこんな時代錯誤なことを意識すること自体が変であると我ながら思う。まさかとうの昔に仏となった親父からの「汗をかけ！」という啓示でもあるまいが、もしそうだとしたら50近くにもなってまったくもって煩わしい話だ。だけども、あの頃の、父の、野良着姿の、モノトーンの色彩だけは、いつになっても忘れたくないということだけは確かなのである。
